kaigonoki’s diary

えがおの高齢者を増やす介護士

老いと共に強まる執着心を理解するには?

高齢者の方と接する中で、「昔はあんなことなかったのに、最近妙にこだわりが強くなった」と感じたことはありませんか?

 

確かに、年齢を重ねるにつれて、執着心が強くなる傾向はあります。このブログでは、その背景にある心理的な要因や、介護士としてどのように寄り添い、支援していくべきかについて、具体的な事例を交えながら考察していきます。

 

執着心が強くなる背景

高齢者の方の執着心が強くなる理由は、様々考えられます。以下に、主な要因をいくつか挙げます。

 

  • 喪失体験の積み重ね: 人生を歩む中で、大切な家族や友人、仕事、健康など、様々なものを失ってきた経験は、高齢者にとって大きな心の負担となります。失ったものを取り戻そうとする心理的な防衛反応として、執着心が強くなることがあります。
  • 将来への不安: 死が身近に迫る高齢期になると、将来への不安や孤独感を抱きやすくなります。そのような不安を和らげようとする心理から、特定のものや人に執着してしまうケースが見られます。
  • 認知機能の低下: 認知機能が低下すると、判断力や柔軟性が失われ、こだわりや固執が生じやすくなります。特に、アルツハイマー認知症などの場合には、執着心が症状の一つとして現れることがあります。
  • 社会的孤立: 家族や友人との交流が減ったり、外出の機会が減ったりすることで、孤独感を抱きやすくなります。孤独感は、不安や焦燥感を生み出し、執着心を強める要因となります。

介護士として寄り添うためのヒント

高齢者の方の執着心に寄り添い、支援していくためには、以下の点に注意することが大切です。

 

  • 共感と受容: まず、高齢者の方の話をじっくりと聞き、共感し、受容することが重要です。その上で、なぜそのような執着心が生まれるのか、背景にある心理的な要因を理解しようと努めましょう。
  • 無理な説得は避ける: 高齢者の方の執着心を無理に説得しようとすると、反発を招いたり、不安を悪化させたりする可能性があります。大切なのは、相手の気持ちに寄り添い、尊重しながら、少しずつ理解を深めていくことです。
  • 代替案の提示: どうしても譲れない執着心がある場合は、代替案を提示することで、気持ちを切り替えられるようにサポートすることも有効です。例えば、特定の持ち物に執着している場合は、似たようなものを用意したり、思い出話をすることで、気持ちが落ち着くこともあります。
  • 専門家の介入: 認知機能の低下や精神疾患が原因で執着心が強い場合は、専門家の介入が必要となる場合があります。医師や精神科医介護福祉士などの専門家に相談し、適切な治療やケアを受けることが重要です。

 

【事例】

80代のAさんは、認知症と診断され、介護施設に入所していました。Aさんは、若い頃に使用していた古いラジオに強い執着を示し、常に持ち歩いていました。ある日、職員がラジオが壊れているのに気づき、Aさんから壊れたラジオ預かり修理に出そうとしましたが、Aさんは激しく抵抗し、暴言を吐きました。

 

そこで、職員はAさんの話をじっくりと聞き、なぜそのラジオに執着しているのかを理解しようと努めました。Aさんにとって、そのラジオは亡くなった夫との思い出が詰まった大切なものでした。職員は、Aさんの想いを汲み取り、Aさんと一緒に修理を頼みに行き、修理が完了し以前と同様にラジオから音楽を聴いたりすることで、Aさんの気持ちを落ち着かせることができました。

 

おわりに

高齢者の方の執着心は、決して悪いものではありません。むしろ、心の支えや生きる力になっている場合もあります。介護士として大切なのは、高齢者の方の気持ちを理解し、共感し、寄り添いながら、適切な支援を行うことです。

 

本ブログが、高齢者の方との接する際のヒントとなり、少しでもお役に立てば幸いです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。