kaigonoki’s diary

えがおの高齢者を増やす介護士

頼まれるとどうしても断れない人は、断る練習が必要

「悪いなと思っても断れない」

「結局自分が引き受けてしまう」


そんな日々が積み重なっていくと、気づかぬうちに心が擦り減ってしまうことがあります。

 

私も、介護士として老人ホームで働くなかで、ずっと「頼まれごとを断れない人間」でした。

 

入居者様からのお願い、同僚からの頼みごと、上司からの急な指示。どれも「NO」と言えず、できる限り応えようとしてきました。

 

けれど、ある時ふと気づいたのです。
「私は、誰のためにやっているのだろう?」と。


本当に相手のため?それとも、嫌われたくない、申し訳ないという“自分の不安”を打ち消すために動いていたのかもしれない――。

 

頼まれたことを断れないのは優しさ?それとも…

頼みごとを断れないというのは、一見とても優しいことのように見えます。実際、「あの人は頼めば何でもやってくれる」と思われ、感謝された経験もあるかもしれません。

 

でも、本当にそれは“思いやり”だったのでしょうか?


もしかしたら、自分が我慢を重ねていることにすら気づかず、「いい人であろう」と無意識に頑張り続けてしまっていただけなのかもしれません。

 

私たち介護士は、「人の役に立ちたい」「人に寄り添いたい」という思いが人一倍強い仕事です。それは素晴らしい特性です。けれど、その気持ちが度を超えてしまうと、自分を犠牲にしてでも誰かのために尽くそうとしすぎてしまいます。

 

断ることは、冷たいことではない

「断るなんて冷たい」「申し訳ない」という感情が強い人ほど、無理をしてしまいがちです。でも、断ること=人を突き放すこと、では決してありません。

 

断るというのは、相手との距離を上手に保ち、お互いを尊重するための“健康的な境界線”を引く行為です。


境界線があってこそ、人間関係は長続きします。介護の現場でも、自分の心と体が健やかであるからこそ、入居者様に対してもやさしく接することができるのです。

 

自分の体調が限界なのに、笑顔をつくって働き続けることが、本当の意味での“思いやり”と言えるでしょうか?


「疲れているときは休む」「できないことはできないと言う」――このあたり前のことが、なぜか私たちは一番難しく感じてしまいます。

 

断ることにも「練習」が必要

断るのが苦手な人には、共通した心理的背景があります。

 

🌕相手に嫌われたくない

 

🌕自分が断ることで人間関係が壊れるのではという不安

 

🌕頼られる自分に価値を感じてしまう

 

🌕相手の気持ちを優先しすぎてしまう

 

これらの感情が積み重なって、つい「いいですよ」「私がやっておきます」と言ってしまうのです。

 

けれど、断る力というのは、ある意味“筋力”のようなもの。日頃から少しずつ鍛えていくことで、少しずつ言えるようになっていきます。


はじめから完璧に断れなくていいのです。「断る練習」は、まず小さな場面から始めてみましょう。

 

たとえば…

 

🌕本当に無理なお願いに「少し考えてもいいですか?」と返してみる

 

🌕「今回は難しいけれど、次は協力しますね」と代替案を伝える

 

🌕「ごめんなさい、それは今はできそうにありません」と自分の状況を説明する

 

最初は心臓がドキドキするかもしれません。でも、伝えてみると意外にも相手は「わかったよ」とすんなり受け入れてくれることがあります。


そういう経験を重ねていくと、「断ることは怖くない」と少しずつ実感できるようになります。

 

「NO」と言えることで、本当にやりたいことに力を注げる

断ることができるようになると、自分の時間やエネルギーを取り戻せます。そうすると、不思議と仕事の効率もよくなり、やりたいことに集中できるようになります。

 

私も、断る練習を始めてから、自分の中のストレスが少しずつ軽くなっていきました。


「私はこれをやりたい」「これは私の役割ではない」という線引きが明確になると、介護の現場でも“やらされ感”ではなく“自分で選んでやっている感覚”を持てるようになりました。

 

その結果、入居者様との関係にも変化がありました。


無理をして笑っていたときよりも、自然体でいるときのほうが、心が通い合いやすい。これは意外な発見でした。

 

自分を守ることは、相手を守ることにもなる

自分を大切にすることは、周囲を大切にすることにつながっています。


無理をして倒れてしまえば、結果的に誰かに負担がいってしまうのです。

だからこそ、「断る」という行為は、自己中心的な行動ではありません。


むしろ、よりよいチームや人間関係を築くために欠かせないスキルだと言えるでしょう。

 

私たちはプロフェッショナルです。そしてプロフェッショナルだからこそ、自分の限界や状態を自覚し、必要なときに「NO」を伝える勇気も持ちたい。


それが、より長く、より健やかに、この仕事を続けていくための知恵でもあります。

 

もしあなたが、「頼まれるとどうしても断れない」と感じているのなら、それはあなたが優しい心の持ち主である証拠です。


でもその優しさを、どうか自分自身にも向けてください。

 

まずは小さな「NO」からでいいんです。


「今日は自分を優先する」――そんな練習を、少しずつ始めていきましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。