日々の業務の中で、入居者様一人ひとりと向き合い、寄り添うことを心がけています。けれども、介護の仕事は忙しさに追われることも多く、「効率」を優先するあまり、一つひとつの対応が雑になってしまうことがあります。その中で、私が気づいたのは「あいさつ」の大切さでした。
この記事では、「自分の良心が喜ぶ丁寧なあいさつをすると、どんな変化が生まれるのか」について、私の経験を交えてお話ししたいと思います。
あいさつがもたらす安心感
まず、あいさつは「心の扉を開く鍵」のようなものだと感じます。たとえどんなに些細なことであっても、心を込めたあいさつをすることで、入居者様の表情が和らぎ、安心感が生まれるのです。
ある日のこと、私が担当していたCさんは、介護施設に来られて間もない方でした。新しい環境に慣れず、不安そうな様子でスタッフともあまり会話をされませんでした。
そんな中、私は朝一番に「おはようございます」と笑顔で声をかけることを心がけました。ただ言葉を発するだけでなく、Cさんの目を見て、少しだけ時間を取るようにしたのです。
すると、最初はうつむいていたCさんが、少しずつ「あ、ありがとう」と返事をしてくれるようになり、次第に日々の生活について話をしてくれるようになりました。丁寧なあいさつが、Cさんの不安を取り除き、私たちの関係を少しずつ築いていくきっかけとなったのです。
忙しい中でも「あいさつ」を丁寧にする意味
介護の現場では、時間に追われることが多いですよね。食事介助や入浴支援、清掃や書類作成など、どれも大切な仕事ばかりです。しかし、忙しさを理由にあいさつをおろそかにしてしまうと、私たちの良心が少しずつ疲弊してしまうように感じます。
私が意識しているのは、どんなに忙しくても「立ち止まる」時間を持つことです。たとえば、廊下で入居者様とすれ違うとき、ただ「こんにちは」と声をかけるだけではなく、「今日はどうですか?」や「気分はどうですか?」と一言添えるようにしています。
この小さな行動が、入居者様に「自分は大切にされている」という感覚を与えるだけでなく、私自身にも「自分は人と真心で向き合えている」という満足感を与えてくれます。
あいさつが生む「人と人とのつながり」
あいさつには、入居者様だけでなく、私たちスタッフ同士の関係性を深める力もあります。介護の仕事はチームで取り組むことが多く、円滑なコミュニケーションが必要です。丁寧なあいさつは、その基本となります。
例えば、ある日、同僚のDさんが体調を崩しそうなくらい忙しそうにしているのに気づきました。そのとき、私は「お疲れさまです。何か手伝えることがありますか?」と声をかけました。Dさんは一瞬驚いた表情を見せましたが、「ありがとう、本当に助かる」と笑顔で返してくれました。
その日以降、Dさんとは自然にお互いをサポートし合う関係が築けました。あいさつは単なる礼儀ではなく、相手の気持ちに寄り添う第一歩であり、人と人をつなぐ絆のようなものなのです。
自分の良心が喜ぶ瞬間
「あいさつをすること」が良心に喜びをもたらす理由は、それが「自分が大切にされている」と感じられる瞬間をつくるからではないでしょうか。そして、それは入居者様にも、同僚にも、私自身にも作用するのです。
特に印象に残っているのは、Eさんという入居者様との出来事です。Eさんは車椅子で生活をされており、外出の機会が少ない方でした。
ある日、「こんにちは、今日は何かしたいことありますか?」と声をかけると、Eさんは「そんなこと、初めて聞かれたよ」と笑いながら答えてくれました。その後、一緒に中庭を散歩し、季節の花を見ながら少しの時間を共有しました。
この出来事が教えてくれたのは、あいさつが単なる形式的なものではなく、人の心を動かし、良心を満たしてくれる行為だということです。それが、相手を思いやる気持ちから生まれたものであればなおさらです。
あいさつがもたらす変化
丁寧なあいさつは、入居者様の生活に安心感をもたらし、スタッフ同士の関係を良好にし、自分自身の良心を満たす力があります。そして、その変化は決して一朝一夕で起こるものではありません。日々少しずつ積み重ねることで、気づけば施設全体の雰囲気が温かく、思いやりに満ちたものになるのです。
さいごに
私たち介護士にとって、あいさつは単なる「業務」ではなく、人としての温かみを伝える大切な手段です。それが入居者様や同僚、そして自分自身にポジティブな影響を与えてくれると気づいたとき、私たちの仕事はさらに喜びに満ちたものになります。
今日もあなたが働く場所で、「おはようございます」「こんにちは」と心を込めたあいさつをしてみてください。それが誰かの心を温める小さな灯火になるかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございます。