私は、老人ホームで介護士として働いています。日々、入居者様のケアに携わる中で、多くの「曖昧さ」と向き合っています。
「なんでこんなに物事がはっきりしないの?」
「どうして答えが決まっていないの?」
「正解がわからないまま進むのが怖い…」
そんなふうに思うこと、ありませんか? 介護の仕事に限らず、私たちが生きるこの世界には、はっきりしないこと、予測できないこと、コントロールできないことがあふれています。
でも、その「曖昧さ」は本当に悪いものでしょうか? 今日は、曖昧さに苦しんでいるあなたに向けて、少しでも気持ちが楽になるような言葉をお届けしたいと思います。
1. 介護の現場は「曖昧さ」の連続
私が介護士になって最初に感じたのは、「答えがひとつではない」ということでした。
例えば、入居者様が食事を拒否したとき。
「お腹が空いていないのか?」
「食事の形態が合わないのか?」
「もしかして、気分がすぐれないのか?」
理由は人それぞれで、決して「これが正解!」とは言い切れません。試行錯誤しながら、その人にとっての最善を探していくしかないのです。
また、ある入居者様が不機嫌なとき、私たちはその原因を考えます。でも、その人自身も「なんでこんな気持ちなのかわからない」と思っているかもしれません。
言葉にできない不安や寂しさが心の中にあるのかもしれない。でも、それを完全に知ることはできないのです。
こうした「わからなさ」に向き合いながら仕事をするのは、簡単なことではありません。
時には、自分の判断が正しいのかどうか悩み、答えのない問いに苦しむこともあります。
でも、あるとき気づいたのです。「曖昧さ」があるからこそ、人と人との関わりが生まれるのではないか、と。
2. 曖昧だからこそ、人間関係は成り立つ
もし、すべてのことがはっきりしていて、ルール通りに進めばいいだけの世界だったら、人間関係はどうなるでしょうか?
例えば、「この人はいつも〇〇が好きで、必ずこういう反応をする」と決まっていたら、私たちは相手を深く知ろうとすることも、思いやることも必要なくなってしまうかもしれません。
でも実際には、人の気持ちも、行動も、状況も、毎日少しずつ変わります。
その曖昧さがあるからこそ、「どうしたらいいんだろう?」と考え、寄り添おうとするのではないでしょうか。
私たちは「完璧な答え」ではなく、「その時々でできる最善」を探しながら生きています。それでいいのです。
3. 曖昧さを受け入れることで、心が軽くなる
「白か黒か」
「正しいか間違っているか」
そんなふうに、はっきりした答えを求めたくなる気持ち、よくわかります。特に、何かに迷っているとき、不安を感じているときは、すぐに答えがほしくなるものです。
でも、この世の中は、多くのことがグレーゾーンです。100%正しい答えがないこともたくさんあります。そして、その曖昧さを否定し続けると、心がどんどん苦しくなってしまいます。
私は介護の仕事を通して、少しずつ「わからなくてもいい」「今できることをすればいい」と思えるようになりました。
たとえば、入居者様が笑顔でいてくれる日もあれば、そうでない日もある。でも、私が心を込めて接することは、どんな日でも変わらない。
結果がどうであれ、「やれることをやった」と思えるようになれば、それでいいのではないでしょうか。
4. 曖昧さの中で「自分にできること」を探す
曖昧な状況に直面したとき、どうしたらいいのか迷ってしまうこともあるでしょう。
そんなときは、「今、自分にできることは何か?」と考えてみてください。
✔ すぐに答えを出すのではなく、一歩引いて考えてみる
✔ すべてを完璧にしようとせず、できる範囲でベストを尽くす
✔ 迷ったときは、誰かに相談する
介護の仕事でも、「これが絶対正しい」という選択肢がないことが多いです。でも、だからこそ、私たちは経験を積みながら、そのときどきでよりよい方法を見つけていくことができます。
大切なのは、「間違えないこと」ではなく、「考え続けること」。そして、「どんな状況でも、できることがある」と思うこと。
5. 曖昧さと向き合いながら生きていく
「曖昧なものが苦手」という方は、きっと責任感が強く、まじめで、一生懸命な人なのだと思います。だからこそ、「ちゃんとしなきゃ」と思うし、「正解がほしい」と感じるのではないでしょうか。
でも、世の中には、どうしてもはっきりしないことがあるのです。
そして、それは決して悪いことではありません。
曖昧だからこそ、人は考え、悩み、成長します。曖昧だからこそ、人とのつながりが生まれます。曖昧だからこそ、「今できること」を大切にできるのです。
「わからないことがあってもいい」
「迷いながらでも、前に進めばいい」
そんなふうに思えたとき、少しだけ心が軽くなるかもしれません。
おわりに
曖昧さに耐えられないと感じるときは、「今の自分にできること」を見つめてみてください。
すべてを完璧に理解しなくてもいいし、すぐに答えを出さなくてもいい。
介護の仕事も、人生も、「わからないこと」を抱えながら進んでいくもの。だからこそ、一歩ずつ、自分のペースで歩んでいきましょう。
あなたの心が、少しでも穏やかになりますように。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。