kaigonoki’s diary

えがおの高齢者を増やす介護士

身近な人も信じられないという気持ちになったら

「もう誰も信じられない」


そんな言葉を心の奥で、こっそりつぶやいたことはありませんか?


信じていた人に裏切られたり、期待を打ち砕かれたり、寄り添ってほしかったときにそっぽを向かれたり。そんな経験が重なると、信じることそのものが怖くなってしまうのも、無理のないことです。

 

私は、介護士として老人ホームで働いています。日々、高齢の方と関わりながら、人の弱さやつらさ、そしてその中にある静かな強さを感じる仕事です。でも、ここに来る方の中にも「もう誰のことも信じられない」と口にする方がいます。

 

それは、家族との関係がこじれてしまった人。


介護に疲れ、孤独に押しつぶされそうになった人。


長年支えてくれたパートナーを亡くし、心にぽっかり穴が空いてしまった人。

 

そんな方々の隣にいて、話を聞いているうちに思うのです。


「信じられなくなること」って、決して悪いことではないのかもしれないと。

 

信じられなくなるのは、自分を守る反応

人を信じるって、本来とても怖いことです。
なぜなら、信じるということは「裏切られる可能性も受け入れる」ことだから。

 

だから、信じたくても信じられないとき、心のどこかで「これ以上傷つきたくない」という自分の声が聞こえているのだと思います。

 

誰かに傷つけられた記憶は、簡単には癒えません。


「もう同じ思いをしたくない」と感じたとき、人は心を閉ざします。


それは弱さではなく、防御反応です。自分の心を守ろうとする、生きるための知恵です。

 

私たち介護士も、人間関係のなかでしんどい思いをすることはあります。


スタッフ間のすれ違い、ご家族との対応、時には入居者の方から厳しい言葉を受けることも。

 

それでも「この人は本当はこう言いたいのではないのかもしれない」と思いながら関わっていく。


でも、そんなふうに受け止め続けるのは、正直、とても疲れるときもあります。


「もう誰のことも信じたくない」と思う瞬間は、きっと私自身にもあったのです。

 

信じられないときこそ、自分の気持ちに正直になる

身近な人を信じられなくなったとき、多くの人は自分を責めます。


「私は心が狭い」「私は人を大事にできない」「私に問題があるのではないか」と。

でも、自分を責める前に、一つ立ち止まって考えてみてください。

 

それだけのことが、あなたの身に起きたのです。


あなたの心が疲れ果てるほどの出来事があったのです。


今、信じられない気持ちは、あなたの心からの正直な叫びなのです。

 

無理に「信じなきゃ」と思う必要はありません。
誰かを許そうとしたり、理解しようとしなくても大丈夫です。

 

まずは、「私は今、誰のことも信じられないと思っている」という気持ちを、そのまま認めてあげてください。

 

それは、あなたの中にある傷ついた部分が、あなたに助けを求めているサインです。

 

信じるとは「完全に理解すること」ではない

介護の現場でもよく感じるのは、「信じる=理解し合える」ことではないということです。

 

入居者の方の中には、怒りっぽかったり、気難しかったりする方もいます。
けれど、その奥には必ず「自分をわかってほしい」という思いがあります。


その人の過去や価値観、抱えてきた痛みを少しずつ知っていくと、「ああ、そうだったのか」と思える瞬間があるのです。

 

信じるということは、相手の全てを受け入れることではなく、「わからない部分があっても一緒にいる」と決めることなのかもしれません。

 

それは、少しずつ心の距離を測りながら、無理なくできる範囲で関係を築いていくこと。


そして、何よりもまず、自分のことを信じること。

 

「私はもう誰のことも信じられないと思ってしまっている」


そう思う自分の気持ちを、まずは一番近くで認めてあげる。
それが、他人を信じ直すための第一歩になるのだと思います。

 

心の扉は、ゆっくり開いていい

信じることを急がなくて大丈夫です。


心の扉は、こじ開けるものではありません。


外からノックの音が聞こえたとき、少しずつ開いてみる。
それくらいで、ちょうどいいのです。

 

もし、あなたのまわりに「信じてみたい」と思える人が一人でもいたら、その人の言葉をすぐに鵜呑みにしなくてもいいから、ちょっとだけ耳を傾けてみる。


それだけで、あなたの心の奥にある「信じたい気持ち」は、ほんの少しずつ、動き出します。

 

さいご

私たちは皆、人を信じられなくなる時期があります。


それは、あなたが優しさを知っている人だからこそ、深く傷ついた証です。

 

「信じたいのに信じられない」


そんなあなたの気持ちは、誰にも否定されるものではありません。
今は、無理に前向きになる必要も、無理に笑顔をつくる必要もありません。

 

ただ、自分を責めずに、「私はよく頑張ってる」と、そっと認めてあげてください。


そうすることで、いつかきっと、もう一度人を信じてみようと思える日がやってくるはずです。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。