kaigonoki’s diary

えがおの高齢者を増やす介護士

心が荒れた時、自分の中のやさしさとつながるには?

 

介護の現場で働いていると、日々の小さな喜びと同じくらい、心が揺さぶられる瞬間に出会います。


入居者様の体調が急に変化したとき、なかなか思い通りにいかないケアに直面したとき、または人間関係の中で気持ちがささくれ立ってしまったとき――心が「荒れる」感覚を抱くことは、きっと誰にでもあるのではないでしょうか。

 

私は介護士として働きながら、何度もその「心の荒れ」に直面してきました。

 

仕事柄、やさしさや思いやりを大切にすることは当たり前だと頭では分かっています。けれど、疲れが重なったり、自分の余裕がなくなったりすると、どうしても心の中がギシギシしてしまうのです。

 

そんなとき、ふとした拍子に自分の声がきつくなったり、表情が硬くなったりして、「ああ、本当はこんなふうに関わりたかったんじゃないのに」と自己嫌悪に陥ることもありました。

 

では、どうしたら荒れた心をやさしさに戻すことができるのでしょうか。今日は私自身の体験や、日々の中で実践している方法を交えながら、「自分の中のやさしさとつながる」ヒントを綴ってみたいと思います。

 

1. まずは「荒れている自分」を否定しない

心が荒れているとき、私たちは「こんな自分ではいけない」と強く責めてしまいがちです。

 

特に介護の仕事をしていると、「優しくなければならない」「常に笑顔でいなければならない」という理想が頭の中に強くあるので、少しでも理想から外れると罪悪感に押しつぶされそうになります。

 

でも、荒れた心を持つこと自体は、決して悪いことではありません。むしろ「私は今、余裕がなくなっているんだな」「疲れているんだな」と気づく大切なサインです。

 

大事なのは、荒れた自分を否定するのではなく、「そんな自分も人間らしい」と受け入れること。そうすると、不思議と心に少しだけ隙間ができて、「じゃあ、どうやってやさしさを取り戻そうか」と考える余地が生まれます。

 

2. 呼吸を整える、小さなリセット

忙しい現場で「心を整える」なんて難しいと思うかもしれませんが、ほんの数十秒でもできることがあります。それは呼吸を意識することです。

 

たとえば、入居者様のお部屋を出て廊下に出たとき、トイレに立ったとき、ナースステーションに戻る前のほんの一瞬。そこで深く息を吸って、ゆっくりと吐いてみます。

 

「私は今、呼吸している」


「ここにいるだけでいい」

 

そう自分に声をかけるだけで、不思議と心が少し落ち着いてきます。呼吸は一番身近なリセットボタンです。感情が荒れているときほど、まずは体を整えてあげることが、やさしさへの第一歩になります。

 

3. 「ありがとう」を思い出す

心が荒れているときは、視野が狭くなってしまいます。相手の言葉や態度の一部だけが引っかかり、「どうしてわかってくれないんだろう」「なんでこんなに大変なのに」と不満ばかりが膨らみがちです。

 

そんなとき、私はあえて「ありがとう」を思い出すようにしています。

 

🌕入居者様が見せてくれた笑顔


🌕「今日は来てくれてよかった」と言われたひと言


🌕同僚がさりげなく助けてくれた瞬間


🌕無事に今日も仕事に来られた自分の体

 

小さなことでも「ありがとう」を思い返してみると、不思議と心が温まります。荒れた心は、感謝を思い出すことで少しずつやわらいでいきます。

 

4. やさしさは「自分へのやさしさ」から始まる

介護の仕事をしていると、どうしても「相手を優先する」ことが多くなります。入居者様、ご家族、職場の同僚――誰かのために動くことが当たり前です。

 

でも、忘れてはいけないのは、自分自身もまた「ケアされるべき存在」だということです。

 

疲れているときは、休むこと。


頑張った日は、自分をねぎらうこと。


好きなものを食べたり、趣味に没頭したり、自分を満たす時間を持つこと。

 

これらは決してわがままではなく、「自分の中のやさしさ」を守るために必要な営みです。自分を大切にすることで初めて、他人にもやさしくできるのだと、私は身をもって感じています。

 

5. 「やさしさ」は思い出すもの

心が荒れたとき、「やさしさを取り戻さなきゃ」と焦ると、かえって空回りしてしまうことがあります。やさしさは頑張って作り出すものではなく、もともと誰の中にもあるもの。ただ忘れているだけなのです。

 

私の場合、入居者様の手をそっと握った瞬間に「ああ、やっぱりこの仕事が好きだ」と思い出すことがあります。


同僚と笑い合ったときに、「こんな仲間がいてありがたいな」と気づくことがあります。

 

つまり、やさしさは「戻す」よりも「思い出す」もの。日常の小さな瞬間に、そのきっかけは必ずあります。

 

6. 荒れた心が教えてくれること

最後に、少しだけ視点を変えてみましょう。


心が荒れるのは、決して悪いことだけではありません。

 

それは「今の自分には余裕がない」という大切なサインであり、同時に「もっとやさしくありたい」という願いがある証拠でもあります。もし本当に冷たい人間なら、心が荒れることにすら気づかないでしょう。

 

だからこそ、心が荒れたときは「やさしさを取り戻したい」と願う自分に気づけるチャンスです。その気づきこそが、すでにやさしさへの第一歩なのだと思います。

 

おわりに

介護士という仕事は、心をすり減らす場面も多いですが、それ以上に「やさしさ」や「人とのつながり」を深く実感できる尊い仕事です。

 

心が荒れることもある。


でも、荒れるからこそ、やさしさを思い出せる。


そしてそのやさしさは、まず自分へのいたわりから始まる。

 

読んでくださった方が、もし今「心が荒れている」と感じていたとしても、その気持ちを否定しなくて大丈夫です。


少し深呼吸をして、「ありがとう」を思い出して、自分自身を優しく抱きしめてあげてください。

 

その先で、きっとまた自分の中のやさしさとつながれるはずです。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。