kaigonoki’s diary

えがおの高齢者を増やす介護士

あらゆる問題は自ら生み出した幻

突然ですが、あなたは最近、どんなことで悩んでいますか。

 

仕事でしょうか。
人間関係でしょうか。


将来への不安、過去への後悔、自分自身への苛立ちかもしれません。

 

私自身、老人ホームで介護士として働く中で、何度も「もう限界だ」と感じてきました。


心も身体も疲れ切って、夜布団に入っても、頭の中では入居者様の顔や、今日の失敗、言えなかった言葉ばかりが浮かんでくる。


「自分は向いていないのではないか」


「もっとちゃんとできる人がいるのではないか」


そんな思いが、胸を締め付けていました。

介護の現場には、問題が山ほどあります。


人手不足、時間に追われる業務、価値観の違い、家族対応、そして命と向き合う責任。
一つ解決したと思ったら、また次の問題が現れる。


まるで、終わりのない迷路の中を歩いているようでした。

でも、ある日ふと、の何気ない入居者様一言に、立ち止まらされたのです。

 

「あなた、そんなに難しい顔しなくていいのよ。
起きてもいないことまで、心配しても仕方ないじゃない」

 

その言葉は、決して深刻な場面で言われたものではありません。


お茶を飲みながら、窓の外を眺めているときの、独り言のような一言でした。
けれど、不思議と胸に残りました。

 

起きてもいないこと。
そう、私が抱えていた多くの悩みは、まだ起きていない未来への不安でした。

 

「このまま働き続けて、身体はもつのだろうか」


「ミスをして、大きな事故につながったらどうしよう」


「周りから、できない介護士だと思われているのではないか」

 

そのどれもが、現実ではなく、頭の中で作り上げた映像でした。


確かに、介護の仕事は大変です。


でも、その瞬間、目の前にある現実は、
入居者様が穏やかに呼吸をし、
「ありがとう」と微笑んでくれている、ただそれだけの時間でした。

 

私たちは、いつの間にか、現実よりも「想像」に苦しめられるようになります。


まだ起きていない失敗を何度も反芻し、
誰かに言われてもいない言葉を、自分で作り出して傷つく。


そうして、自分の中に問題を積み上げていくのです。

 

読者のあなたも、きっと心当たりがあるのではないでしょうか。

 

本当は、今日一日を無事に終えただけなのに、
「明日が不安だ」と心を曇らせてしまう。


誰かの何気ない態度を、
「嫌われている証拠だ」と決めつけてしまう。

 

けれど、それは本当に“問題”なのでしょうか。

 

老人ホームで働いていると、
人生の終盤を生きる方々の言葉や姿に、何度も教えられます。

 

「若い頃はね、いつも何かに追われていたの」


「でも今思えば、あんなに悩む必要なかったわ」

 

そう話す入居者様の表情は、とても穏やかです。


彼らは、人生を振り返る中で、
多くの悩みが「幻」だったことに、気づいているのかもしれません。

 

もちろん、苦しみや悲しみがなかったわけではありません。


大切な人との別れ、病気、貧しさ、戦争。
それらは決して幻ではない、現実の痛みです。

 

けれど、必要以上に自分を責め、
未来を恐れ、
自分の価値を疑い続けた時間は、
後になって振り返ると、「自分で作り出していた苦しみ」だったと、彼らは語ります。

 

私たちは、問題を解決しようとする前に、
その問題が本当に存在しているのか、立ち止まって見つめ直す必要があるのではないでしょうか。

 

今、目の前で起きていることは何ですか。
呼吸はできていますか。


今日、誰かと笑顔を交わせましたか。

それだけで、十分ではありませんか。

 

介護士として働く私は、
「ちゃんとしなければ」「もっと頑張らなければ」と、
自分を追い込むことが癖になっていました。

 

でも、入居者様が静かに眠っている姿を見ていると、
人は、完璧でなくても、生きているだけで尊いのだと、思い知らされます。

 

問題がすべて消える日など、きっと来ません。
けれど、その多くは、
自分の頭の中で大きく膨らませた“幻”なのかもしれません。

 

もし今、苦しんでいるあなたがいるなら、
どうか自分にこう問いかけてみてください。

 

「これは、今ここにある現実だろうか」


「それとも、自分が作り出した想像だろうか」

 

答えがすぐに出なくても構いません。
ただ、立ち止まって、深呼吸をしてみてください。

 

老人ホームで働く私は、
今日も誰かの人生の最終章に寄り添いながら、
同時に、自分自身の生き方を学び続けています。

 

あらゆる問題は、自ら生み出した幻。


そう思えたとき、
世界はほんの少しだけ、優しく見えるようになります。

 

今日を生きているあなたへ。
あなたは、もう十分、頑張っています。


そのことを、どうか忘れないでください。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。