老人ホームで働く介護士として、私は日々多くの高齢者の方々と接しています。中には、介護が必要になった親を施設に入所させることに葛藤を抱える方も少なくありません。
「親孝行したい」「できれば自宅で介護したい」という気持ちは当然です。
しかし、介護は想像以上に負担が大きく、仕事や家庭との両立が困難になるケースも多いのです。
ここでは、親の介護ができない理由について、いくつかのケースを交えながら考えていきたいと思います。
■介護の負担が大きすぎる
介護は、体力的な負担だけでなく、精神的な負担も大きいです。24時間365日、親の食事や排泄、入浴などの世話をするのは、想像以上に大変なことです。
特に、認知症の介護は、本人とのコミュニケーションが難しく、介護者自身の心身が疲弊してしまうことがあります。
ケース:
これらのケースでは、介護者自身が仕事を辞めて介護に専念せざるを得ない状況になり、経済的な負担も大きくなります。
■介護する環境がない
介護には、広いスペースや介護用の設備など、適切な環境が必要です。しかし、都市部では住居スペースが限られており、介護用の設備を導入することが難しい場合もあります。
また、近隣に頼れる親族や友人がいない場合は、介護者自身が孤立してしまう可能性もあります。
ケース:
- 夫婦共働きで、子供も独立しているため、介護する人がいない。
- アパート住まいで、介護用の設備を導入するスペースがない。
これらのケースでは、介護者が仕事を辞めて介護に専念するだけでなく、住環境を変える必要も出てくる可能性があります。
■親との関係が悪い
親との関係が悪く、介護に抵抗を感じる場合もあります。
長年、親から虐待を受けてきたり、親に依存されてきたりといった経験があると、介護に対して強い拒否感を抱くことがあります。
ケース:
- 父親から長年DVを受けており、介護をしたくない。
- 母親が過干渉で、自立を妨害されてきた。
これらのケースでは、介護をすることで過去のトラウマが蘇り、精神的な負担が大きくなります。
■経済的な理由
介護には、介護費用や施設入所費用など、大きな経済的な負担がかかります。
介護保険制度を利用しても、全額を賄えるわけではなく、自己負担分の支払いが必要になります。
ケース:
- 低収入で、介護費用を負担できない。
- 親の預貯金が少ないため、施設入所費用を払えない。
これらのケースでは、介護者自身が生活を切り詰める必要が出てくる可能性があります。
介護は誰にとっても他人事ではない
親の介護は、誰にとっても他人事ではありません。いずれ自分にも介護が必要になる可能性があることを念頭に置き、今から準備しておくことが大切です。
もし、親の介護に直面し、一人で抱え込んでいる場合は、周囲に相談してください。
介護保険制度や地域包括支援センターなど、介護を支援する制度やサービスがあります。
また、同じ境遇の人と交流できる場もたくさんあります。
一人で抱え込まず、周囲の力を借りながら、親の介護と自分自身の生活を両立させていきましょう。
介護は「できない」ことを認めてもいい
親の介護は、愛情や責任感だけでは乗り越えられないこともあります。
「できない」ことを認めて、周囲に助けを求めることは決して恥ずかしいことではありません。
介護は、本人だけでなく、家族にとっても大きな負担です。
介護者自身の心身の健康を守ることも大切です。
親孝行の形は、介護だけではありません。
親の気持ちを尊重し、親が望む生活を送れるようにサポートすることが、一番の親孝行かもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。