介護の現場で働いていると、毎日いろいろな人と出会います。
入居者様、ご家族、同僚、看護師さん、調理スタッフさん……それぞれがいろいろな事情や気持ちを抱えながら日々を過ごしています。そんななかで、ときどき「この人はいつもニコニコしているな」と感じる人がいます。
疲れているときでも、忙しいときでも、何気ない瞬間に笑顔を見せてくれる人。ふとした会話の中で、にこやかにうなずいてくれる人。
そんな人に出会うと、「なんであの人はいつもニコニコしていられるんだろう」と不思議に思うことがあります。
この記事では、介護士としての体験を交えながら、「いつもニコニコしている人」の背景や思いについて考えてみたいと思います。
笑顔の裏にあるもの
まず最初にお伝えしたいのは、「いつもニコニコしている人」にも、もちろん悩みや不安、イライラがあるということです。笑顔だからといって、心の中までいつも穏やかとは限りません。
むしろ、笑顔は「その人なりの生き方や選択」の表れなのかもしれません。
🌕周りの人に安心してもらいたいから笑顔を選んでいる。
🌕自分の弱さを隠すために笑顔を使っている。
🌕苦しいときほど笑って、自分を奮い立たせている。
🌕単純に「笑っていたほうが気持ちが楽」と感じている。
笑顔の理由は人それぞれです。でも共通しているのは、その人なりに一生懸命生きている証だということです。
介護現場で出会った「笑顔の人」
私が働く老人ホームにも、いつもニコニコしている同僚がいます。忙しいときも、入居者様から厳しい言葉をかけられたときも、どこか柔らかい笑みを浮かべています。
ある日、私は思い切って聞いてみました。「どうしてそんなに笑顔でいられるんですか?」と。
その同僚は少し考えてからこう答えました。
「笑ってないと、仕事が続けられないんです。大変なことも多いけど、笑っていると自分の気持ちも少し落ち着くんですよね。」
その言葉を聞いて、私はハッとしました。笑顔は単に「周りのため」ではなく、自分を守るための方法でもあるのだと。
笑顔が持つ力
笑顔には不思議な力があります。
1. 相手の心を和らげる
入居者様の中には、不安や寂しさで表情が曇っている方もいます。そんなとき、職員がニコッと微笑むだけで、相手の心も少し柔らかくなることがあります。「大丈夫だよ」という言葉以上に、笑顔は安心を届けてくれるのです。
2. 自分の気持ちを整える
辛いときに無理やりでも笑ってみると、心が少し軽くなる経験をしたことはありませんか?笑顔は、脳や体に「リラックスしている」と錯覚させ、気持ちを落ち着けてくれる効果があります。
3. 人間関係を円滑にする
同じ内容の言葉でも、笑顔で伝えられると受け取り方はまるで違います。介護現場のようにチームで動く職場では、笑顔が雰囲気をやわらげ、協力しやすい関係をつくってくれるのです。
「いつもニコニコ」は簡単じゃない
ただ、ここで忘れてはいけないのは、「いつも笑顔でいることは簡単ではない」ということです。
介護の現場は想像以上に心身の負担が大きく、思わず顔がこわばってしまう瞬間も多いです。そんな中で笑顔を保ち続けるには、並大抵ではないエネルギーが必要です。
だからこそ「なんであの人はいつもニコニコしているんだろう」と思ったとき、その人がどれだけ努力しているのか、その裏でどんな思いを抱えているのかを想像してみると、見える景色が変わってきます。
笑顔と無理の境界線
一方で、笑顔が「無理を隠す仮面」になってしまうこともあります。本当は辛いのに「大丈夫」と言って笑ってしまう。誰にも弱音を吐けず、笑顔の裏で孤独を抱えてしまう人もいるのです。
そんなときは、周りの人が「その笑顔の奥にある気持ち」に気づいてあげることが大切だと思います。「いつも頑張ってるね」「しんどいときは頼ってね」と声をかけられるだけで、救われる人もたくさんいます。
自分にできること
もしあなたが「いつもニコニコしている人」を見かけて不思議に思ったなら、次のことを意識してみてください。
🌕その笑顔の裏にある努力や思いを想像してみる。
🌕「ありがとう」「あなたの笑顔に救われているよ」と伝える。
🌕自分自身も、できる範囲で笑顔を意識してみる。
笑顔は伝染します。誰かの笑顔に励まされ、自分の笑顔がまた誰かを支える。そんな連鎖が広がっていくのだと思います。
まとめ 〜笑顔の理由を考えること〜
「あの人いつもニコニコしているけどなんでだろう」と感じたとき、その人の心の中を想像することは、自分自身の生き方を見つめ直すきっかけにもなります。
笑顔は単なる表情ではなく、その人の強さや優しさ、そして時には無理を隠すサインでもあります。笑顔を向けてくれる人がいることを当たり前にせず、その裏にある努力や思いを受け取ることが大切なのではないでしょうか。
そして私たち自身も、無理に笑うのではなく、「笑っているとちょっと気持ちが軽くなるな」と思えるときには、自然な笑顔を選んでいけたらいいなと思います。
今日、あなたが誰かの笑顔に救われたなら、明日はあなたの笑顔が誰かの心を支えるかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございます。