kaigonoki’s diary

えがおの高齢者を増やす介護士

物差しの違いで見え方まで違う

同じ出来事を見ているはずなのに、
どうしてこんなにも受け取り方が違うんだろう。

老人ホームで働いていると、そんな場面に何度も出会います。


入居者様、同僚、上司、そして自分自身。
同じ時間、同じ場所にいるのに、見えている景色は驚くほど違うんです。

ある日、こんなことがありました。


「今日は何もしてもらっていない」


そう言われた入居者様がいました。

正直、胸がギュッとしました。


トイレ介助もした。食事も見守った。お話もした。
忙しい中で、自分なりに精一杯関わったつもりだったからです。

 

「どうしてそんなふうに言われるんだろう」


「私の関わりって、意味がなかったのかな」


心の中で、そんな言葉がぐるぐる回りました。

でも、少し時間が経ってから、ふと気づいたんです。
私の物差しと、その方の物差しは、まったく違っていたんだということに。

 

私の物差しは


「安全に介助できたか」


「決められたケアをきちんと行ったか」


「業務として抜けがなかったか」

 

一方、その入居者様の物差しは


「自分の話をゆっくり聞いてもらえたか」


「自分の存在をちゃんと見てもらえたか」


「寂しさに寄り添ってもらえたか」

 

同じ一日でも、測る物差しが違えば、見える結果はまるで変わってしまう。


私は“できた一日”だと思っていたけれど、
その方にとっては“満たされなかった一日”だったのかもしれません。

 

それに気づいたとき、胸が少し痛くなりました。
同時に、少しだけ優しい気持ちにもなれました。


「責められているわけじゃない」


「ただ、物差しが違っただけなんだ」


そう思えたからです。

 

介護の現場では、こうしたすれ違いが日常のように起こります。
同僚との間でもそうです。

「あの人は冷たい」


「もっと優しくすればいいのに」


そんなふうに感じることもあるでしょう。

 

でも、その人にはその人の物差しがあります。


効率を大切にする物差し。


ルールを守ることを一番に考える物差し。


感情をあまり表に出さない物差し。

 

それが正しいとか、間違っているとか、
簡単に決められるものではありません。
ただ、違うだけなんです。

 

私たちはつい、自分の物差しで人を測ってしまいます。


「これが普通でしょ」


「私ならこうするのに」


そんな言葉が、心の中に浮かぶこともあるはずです。

 

でも、その“普通”は、あなたの物差しで測った普通。
相手の世界では、まったく違う景色が広がっているかもしれません。

 

そしてこれは、入居者様や同僚だけの話ではありません。
自分自身にも言えることです。

 

「もっとできるはずなのに」


「他の人はちゃんとしているのに」


「私はダメな介護士だ」

 

そんなふうに、自分を責めてしまう日もありますよね。
でも、そのとき使っている物差しは、本当に自分に合ったものでしょうか。

 

完璧にできたかどうか。
ミスをしなかったかどうか。
他人と比べてどうだったか。

 

そんな厳しい物差しばかりで、自分を測っていませんか。

 

もし物差しを少し変えてみたら、見え方も変わるかもしれません。


「今日も笑顔で挨拶できた」


「一人の入居者様と、ちゃんと目を見て話せた」


「疲れていても、仕事に来た自分はえらい」

 

そんな物差しで測ってみたら、
今まで気づかなかった“できている自分”が見えてくるはずです。

 

介護の仕事は、答えがひとつではありません。
誰かの正解が、誰かの不正解になることもあります。
だからこそ、苦しくなることも多い。

 

それでも、この仕事を続けているあなたは、
きっと誰よりも悩み、考え、向き合ってきた人だと思います。

 

物差しが違えば、見え方まで違う。


それを知っているだけで、
人に対しても、自分に対しても、
少しだけ優しくなれる気がします。

 

今日、うまくいかなかったと思った一日も、
別の物差しで測れば、意味のある一日かもしれません。

 

どうか、自分の物差しだけに縛られすぎないでください。
そして、誰かの物差しも、否定しすぎないでください。

 

同じ現場で、同じ時間を過ごしながら、
それぞれ違う景色を見ている私たち。

 

その違いを知ることが、
介護という仕事を、少しだけ楽に、
少しだけ温かいものにしてくれると、私は信じています。

 

今日も現場で踏ん張っているあなたへ。
その頑張りは、ちゃんと意味があります。


あなたの物差しで見えないときは、
少しだけ角度を変えて、違う物差しで見てみてください。

 

きっと、今まで気づかなかった光が、そこにあります。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。