私は、老人ホームで介護士として働いている「かいごの木」です。入居者の方々は、それぞれに人生の酸いも甘いも経験し、様々な思いを抱えて暮らしています。
その中で、よく耳にするのが「みっともない老い方はしたくない」という言葉です。現役時代は、仕事や家庭で周囲の期待に応えようと、常に自分を律して生きてきた人ほど、老いとともに失っていく体力や能力に不安を感じ、そう思うのかもしれません。
たしかに、老いていく過程では、誰もが様々な体の不調や心の変化に直面します。時には、自分の思い通りにいかないことや、人に迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
しかし、私は思います。みっともない老い方でもいい。
なぜなら、老いは誰にとっても避けられない自然な過程だからです。そして、老いていくことは、必ずしも悪いことばかりではありません。
老いていく中で、人はこれまでの人生を振り返り、これまでの生き方を見つめ直すことができます。そして、自分にとって本当に大切なことは何かを、改めて考えることができるのです。
また、老いていく中で、人は周囲の人との関わりをより大切に思うようになります。家族や友人との絆を深め、地域社会の中で生きがいを見つけることができるのです。
もちろん、みっともない老い方を避けるために、健康や体力づくりに努めることは大切です。しかし、それ以上に大切なのは、老いを受け入れ、自分らしく生きることだと思います。
私が老人ホームで働く中で、みっともない老い方をしながらも、幸せに暮らしている入居者の方々をたくさん見てきました。
例えば、ある入居者さんは、認知症が進み、自分の名前も思い出せない状態になってしまいました。しかし、それでも、毎日のように歌を歌ったり、絵を描いたりして、楽しみながら過ごしています。
また、ある入居者さんは、足腰が不自由になり、歩行器がないと歩けなくなってしまいました。しかし、それでも、毎日のように散歩に出かけ、外の空気を吸って楽しんでいます。
彼らは、自分から見ても、みっともない老い方をしながらも、自分らしく生きることを諦めていません。そして、その姿は、周囲の人たちを温かく包み込んでいます。
もし、あなたが「みっともない老い方はしたくない」と悩んでいるなら、ぜひ、このような人たちの姿を思い出してみてください。そして、自分らしく生きることの大切さを、改めて考えてみませんか。
もちろん、みっともない老い方を避けるために、できることはたくさんあります。しかし、それ以上に大切なのは、自分らしく生きることだと思います。
みっともない老い方でもいい。その方が、きっと幸せな老後を送ることができるのではないでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。