kaigonoki’s diary

えがおの高齢者を増やす介護士

老人ホーム入居費用、これ以上高額になったとき

「もう少し安くならないんですか?」
この言葉を、私は何度聞いたでしょうか。


老人ホームで働いていると、入居を検討されているご家族の“ため息”や“迷い”に、毎日のように触れます。

 

パンフレットを広げながら、「ここの月額、こんなにかかるの?」とつぶやく息子さん。


それを横で見つめながら、申し訳なさそうに笑うお母さん。
私はその光景を見るたび、胸がぎゅっと締めつけられます。

 

たしかに、老人ホームの費用は決して安くありません。
入居金が数百万円、月々の利用料が十数万円。


医療や介護、食事、光熱費、レクリエーション費など──
一つひとつを見れば当然のコストなのですが、
それでも「高い」という現実から目を背けることはできません。

 

「親を安心して預けたい」でも「お金が心配」

入居相談に来られるご家族の多くが、こう話します。

 

「母が安心して暮らせる場所を探しているんです」


「でも、年金だけじゃ足りないんですよね……」

 

その声には、愛情と責任、そして“どうにもならない不安”が混じっています。
お金の問題って、本当に残酷です。


「もう少し安いところを」と探しても、どこも似たような価格帯。


安すぎると今度はサービスの質に不安が残る。
そしてまた、ため息をついて帰っていく──。

 

私はそんなご家族の背中を何度も見送ってきました。
「せっかくいいところが見つかったのに…」と悔しそうに涙ぐむ方もいます。


そのたびに思うんです。
“これ以上、老人ホームの費用が高くなったらどうなるんだろう” って。

 

「お金がある人だけが安心できる社会」でいいの?

少し、現実的な話をしますね。
介護業界の人手不足、物価高、光熱費の高騰。


私たち職員の賃金改善も必要だし、施設を維持するにはコストがかかります。
だから、費用が上がるのも“仕方ない”部分がある。

 

でも、“仕方ない”だけで片づけていいのか、と私は思うんです。

介護を必要としているのは、「誰かに頼らなきゃ生きていけない人」。


その人たちが、「お金がないから安心して老後を過ごせない」なんて、
あまりにも悲しすぎる。

 

介護って、本来“命の支え”であるはずなのに、
お金の壁がそれを遠ざけてしまうなんて、
働く側としても、心が痛いです。

 

「家で見ればいい」と言われても…

中にはこう言う人もいます。
「お金がかかるなら、家で見ればいいじゃないか」って。

 

でも、それができないから皆さん悩んでいるんです。


家族にも生活がある。仕事がある。
そして何より、介護は“気力と体力”が必要です。

 

夜中に何度も起きてトイレ介助をする。
食事を作っても、食べてくれない日がある。
怒られたり、泣かれたり、心が折れそうになる。

 

そんな毎日を何年も続けるのは、本当に大変なこと。


「親を大事に思っている」気持ちだけでは、
どうにもならない現実があるんです。

 

だからこそ、老人ホームという選択肢がある。


それなのに、その扉が「お金」で閉ざされてしまうなんて、
どこかおかしいと思いませんか?

 

もし、これ以上費用が上がったら…

正直、怖いです。


今でも「費用のせいで入居を断念する人」が少なくないのに、
これ以上上がったら、いったいどれだけの人が取り残されてしまうのか。

 

介護を受ける人が減るということは、
家族の負担が増えるということです。


そして、介護離職や家庭の崩壊、孤立──
そういった問題がますます深刻になる。

 

私たち現場の介護士も、
「お金が理由で支えられない人」を見送るたびに、
無力さを感じてしまうんです。

 

「本当はここで暮らしてほしかったのに…」
そんな思いを飲み込んで、笑顔で「お大事に」と見送る。
でも、心の中では泣いています。

 

介護は“誰かの幸せ”を支える仕事

私は介護士として、日々たくさんの笑顔を見てきました。
穏やかな表情でご飯を食べる入居者様。


スタッフに「ありがとう」と言ってくれるその一言。
そういう瞬間を見るたびに、
「ああ、やっててよかった」と思うんです。

 

でも、もし費用が上がって、
その“笑顔の瞬間”が減ってしまうのだとしたら、
それはあまりにも悲しいことです。

 

介護って、もっと“身近な存在”であってほしい。
お金持ちだけが利用できる特別な場所ではなくて、
誰でも、安心して頼れる場所であってほしい。

 

これからの未来のために、私たちにできること

私たち介護士にできることは限られています。
でも、「介護の現実」を声にして伝えることはできます。


費用の高さに苦しむ家族の声を、
現場から社会に届けること。

 

そして、利用者様の「ありがとう」を力に変えて、
誰もが安心して老後を迎えられる社会を目指すこと。

 

介護は“支え合い”でできています。
一人の力ではどうにもならないことも、
社会全体で支えれば、きっと道は開けるはず。

 

さいごに──

「お金がないから介護をあきらめる」
そんな言葉を、これ以上聞きたくありません。

 

お金のために我慢する老後ではなく、
心から「安心して過ごせる老後」を、誰にでも。

 

もし、これ以上老人ホームの費用が高くなってしまったら──
きっと、誰かの“希望”が消えてしまう。


だから私は、今日もこの現場で、
一人ひとりの「暮らしたい」という想いを守りたいと思っています。

 

「介護って、人を支える仕事」
その原点だけは、どんなに時代が変わっても、忘れたくありません。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。