私が介護士として老人ホームで働き始めてから、日々の中で強く感じることがあります。
それは「人は誰しも孤独を抱えながら生きている」ということです。
年齢に関係なく、どんなに周りに人がいても、心の奥底にぽっかりと穴が空いたような感覚に襲われる瞬間はあります。
特に高齢の方々は、長い人生の中で大切な人との別れを経験し、自分の存在意義に揺らぎを感じやすくなります。
そんなときに大切なのは、「自分は愛されている」と気づける瞬間を持つことではないでしょうか。
今日は、孤独を感じやすい時代を生きる私たちが、どうやって「愛されていること」に気づけるのか、そしてそれがどれほど心を支えてくれるのかを、一緒に考えてみたいと思います。
孤独は誰の心にも訪れる
孤独と聞くと、「一人ぼっちの状態」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。
人に囲まれていても、心が通じ合わなければ孤独を感じますし、逆に一人でいても安心できる関係があるなら心は満たされます。
老人ホームで暮らす方々の中には、毎日スタッフや他の入居者と会話をしているのに、「私はもう誰からも必要とされていない」と涙をこぼす方がいらっしゃいます。
その姿を見ると、孤独は環境だけでなく、心の感じ方に大きく左右されるのだと痛感します。
「愛されている」とはどういうことか
愛されていることに気づくとは、決して大げさなことではありません。
それは「誰かが自分を気にかけてくれている」と感じられる小さな瞬間の積み重ねです。
たとえば、
🌕毎朝「おはよう」と声をかけてもらうこと
🌕誰かが自分の名前を覚えていてくれること
🌕調子の悪いときに「大丈夫?」と心配してもらえること
🌕好きな話題に耳を傾けてもらえること
こうした一つひとつが、私たちの心に「愛されている」という確かな温もりを残します。
孤独を和らげる「小さな気づき」
ある日、入居者のAさんがぽつりと「家族がなかなか会いに来られなくて寂しい」とお話しされました。
私は「そうですよね、会いたい気持ちはとても自然なことですよね」と寄り添いながら、その方が好きな昔の歌を一緒に口ずさみました。すると、最初は沈んでいた表情が少しずつ柔らかくなり、最後には「あなたと歌えて嬉しいわ」と笑顔を見せてくださいました。
その瞬間、私は強く思ったのです。
「孤独の中にも、愛に気づける瞬間は必ずある」と。
人は時に、「遠くの大きな愛」ばかりを探してしまいます。しかし本当は、身近な小さな出来事の中に、確かに自分を支える愛が存在しています。
愛に気づくための3つのヒント
孤独を感じやすいときこそ、次のような小さな習慣を持ってみると心が軽くなります。
1. 「ありがとう」を探す
一日の終わりに「今日は誰にありがとうを伝えられただろう」と振り返ってみてください。ほんの小さなことでも、感謝の気持ちを持つと、その相手からの愛情を受け取っていることに気づけます。
2. 自分の存在を認める
「私はここにいるだけで誰かの役に立っている」と言葉にしてみましょう。介護の現場でも、入居者の方が笑顔を見せてくださるだけで、私たちスタッフは大きな力をいただいています。存在そのものが、誰かにとっての支えになっています。
3. 小さな交流を大切にする
隣に座った人との挨拶、スタッフとのちょっとした会話、電話や手紙でのやり取り。ほんの短い時間でも、心を通わせることが孤独を和らげます。
愛に気づいたとき、心は強くなる
不思議なことに、「自分は愛されている」と気づくと、人は前向きになれます。
「一人ではない」という安心感が、明日への活力を生み出してくれるからです。
たとえ人生の晩年を迎えていても、その人が笑顔で「まだまだ頑張ろう」と思えるのは、身近な誰かの存在を「愛」として受け取れたからではないでしょうか。
さいごに
孤独は誰にでも訪れます。けれど、その孤独の中で「愛されていること」に気づけるとき、心はそっと癒され、希望を見いだすことができます。
私自身も、介護士として利用者さまから「ありがとう」と言われるたび、「私も愛されている」と実感します。そしてその気持ちが、また誰かを支える力へと変わっていきます。
どうか孤独を感じたときには、身近にある小さな温もりを思い出してください。
その気づきが、あなたの心をやさしく包み込み、明日を生きる勇気になることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。